後押し上手

うちのカミサンは根っからのお嬢様育ち。現実を理解できないのか、あえて理解しようとしていないのか、そのあたりはわからないが、こちらの危機感に関係なく、結果的には僕の背中を押してくれる。 

三十五歳で家を買ったときも、向こう二十五年続くローンをイメージして少しでも節約しようとする僕に「あなたなら大丈夫よ。がんばって」のひと言で予定より六百万円近くオーバーしてしまった。娘や息子のお受験のときも、「無理せず公立に行かせれば?」という僕の言葉を完全無視して突っ走った。 

いちいちムッともするのだが、結果的には自分の人生が充実していたのは、彼女のおかげだと思ったりする。 

負荷をかけられなければ、長いものに巻かれ、ダラダラと凡庸に仕事もしてきたかもしれない。彼女からの経済的プレッシャーのおかげで仕事にも邁進し、実りあるサラリーマン人生を過ごせた気がする。そして、何より驚いたのは、彼女がきちんと貯金を重ねてくれていたこと。切迫した我が家の家計の中でどうやりくりしたのか、住宅ローンは前倒しで返済してくれていた。 

そんなわけで、僕は定年を待たずに再来年、早期退職をしようと思っている。カミサンに叱られるかな、と思いつつ、相談したら、笑顔で「今までお疲れさま」と言ってくれた。こいつ、本当にやるな、と思った。

結果オーライ(55・東京都)


我が家のみそスープ

私は大の和食党で、学生の頃、自炊していたときも、ごはんとみそ汁を朝から作るのを習慣にしていました。青ねぎを刻み、豆腐とわかめの入ったみそ汁が私の朝の定番でした。

それが、結婚を機にがらっとかわってしまったのです。

シンガポール駐在中に、一緒に仕事をしていた日本語も堪能な女性と結婚。言葉も文化もお互いわかりあえ、妻はよきパートナーなのですが、妻はなによりも辛いものが大好きなのです。私の定番みそ汁をどんどん改造していってしまったのです。

はじまりは、一味唐辛子でした。

みそ汁に真っ赤な一味唐辛子が浮いていました。「これは、暑い日には元気が出ていいかもね」と褒めてからというもの、毎朝、何か「技」のあるみそ汁が出てくるようになってしまいました。

みそ汁は、シンプルでいいのに......。

しかし、妻は一生懸命朝早くから起きて食事のしたくをしてくれます。「いいなあ、うちはパンと牛乳だけだよ」という同僚のことを思うと、私は何も言えません。 

昨日の朝のみそ汁にはオクラらしきものが入っていました。オクラは大好きです。だけど、それはハラペーニョ(トウガラシの一種)でした。私は、口から火を噴きそうでした。奥さんは、平気な顔をしてハラペーニョみそ汁をすすっていました。

国際結婚は結構大変かも......と思いはじめております。

純和風の夫(42・神奈川県)


もっと食べたい

太い二の腕、強烈な腰回り、食欲は私の倍以上。《このままでは妻は生活習慣病になってしまう》と心配していた矢先。妻も「まずい!」と自覚したようでダイエットを始めました。 

まずは夜のウォーキング。一人、汗を流すと思いきや「一人じゃ怖い」とかで私も同行することに。それはまあいいのですが、妻は夕食に少量のサラダしか食べなくなりました。 

食事制限にはちょっと不満ブーです。意気込みは感じますが、私の食事も野菜を煮たり、蒸かしたものばかりに。肉料理がメインで、揚げ物もよく並んだ食卓は見るかげもなく、ある晩、私は恐る恐る妻に聞きました。 

「最近の夕飯のおかず、ちょっと寂しくない?」 

すると妻は即座に「だって、おいしそうなものを作ったら、私も食べたくなるじゃない」。 

気持ちはわかります。でも、せめて「あなたの体のためにもいいのよ」ぐらい言ってほしかった、とガックリしてしまいました。 

そんな日々から半年。少しスマートになった妻が突然、私にあるものを差し出したのです。それは前から欲しかった腕時計でした。 

「ダイエットのおかげで食費が浮いちゃったの」 

こうなると、妻には、もっとダイエットに励んでほしいと期待するばかり。 この先も、妻の体重を中心に生活が回っていくのでしょうね。

焼肉大好き(50・三重県)


どちらも怖い

この春に新築したわが家の隣は墓地。しかし、吹き抜ける風はさわやかで、夏でも冷房いらず。エコな家だと感心していましたが......現実的なものが夜ごと出るのです。

カーテン裏から、冷蔵庫と壁の間から、黒光りするそやつは、ササササッと素早い動きで私たちの目の前を通り過ぎていきます。

私などは「出た―っ」と気味の悪さに顔を引きつらせて、ソファーの上に飛び上がるのですが、カミさんはそやつをスリッパで、ときには読みかけの雑誌や新聞紙で「スパーン」と小気味いい音を残して退治してしまいます。見事な腕前は、幼いときより鍛えし剣道三段のなせる技と、ただ感心しておりました。

ところが先日、会社の後輩たちをわが家に招待してビールを飲んでいたときのこと。例のやつが遠慮もなくソファーの下から出てきました。「キャーッ」。なんとカミさんは普段と一変し、乙女のような声を出して隣の私にすがりついたのです――。

私は思いました。黒光りするやつも怖いが、カミさんも怖いと。

ビール党(48・岐阜県)


昔日の面影は消えて

うちのかみさんは本当にコワい。若い頃はかわいらしくて、何を聞いても「はい、あなたのお好きなように」とうつむきながら答えるような女性だったのに、日に日に力強くなり、今や昔の面影は皆無といっていい。結婚式のウエディングドレス姿を見て「食べてしまいたいくらいキレイだ」と感じたのも昔、今は「なぜ、あのとき食べておかなかったのだろう」と後悔することもしばしばである。

これは自分が悪いのだが、たった一度の浮気のときもすさまじかった。寝ている間に僕の腕やら足やらに油性のマジックで浮気相手の名前を書く。当時小学校低学年だった娘と息子に彼女の名前の書き取りを十ページもさせる。僕の下着を夜中にはさみで何枚も切り刻んだこともあった。子どもたちのお受験のときの彼らに対する教育ママぶりも後ずさるほどすごかった。

が、結婚二十八年。結局はかみさんなのである。多くを語らずとも、状況をのみ込み、疲れていれば僕の好きな銘酒を取り寄せ、夕食の席に並べてくれる。仕事のトラブルは一切語らないが、なぜかわかって(それはそれでコワい。スパイでも雇っているのか?)、いつもなら絶対に言わない「気をつけて行ってらっしゃい。今日は美味しいものを作っておくから」などと言ってみたりする。 気がつけば、彼女に守られているなぁと思うわけで、こうなったら、どこまでも、共に歩もうと思ったりもする。

空飛ぶおやじ(55・東京都)


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