目からウロコの仕事力

「お客さまのために」の心が自らの成長・幸せにつながる──「自利利他の精神」

中央学術研究所客員研究員 佐藤武男
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「昨年は売り上げも利益も前年を下回り、目標を大幅に下回った。営業努力が足りない。もっと売り込むこと。今年は挽回し各自必ず目標を達成すること」。こうした社長や上司の訓示が、多くの会社で飛び交っています。

ビジネスの世界で売り上げや利益などの業績を伸ばすことは大事なのですが、お客さまに選ばれ、満足頂いた結果としての利益を目的化してしまうといろいろな問題が出てきます。今月も売り上げや利益が目標に届かなかった。だから、その分を取り戻そうという気持ちでお客さまに接していると、以心伝心で相手に心を見透かされ、かえって契約が取れないものです。

大事なことは、こちらの売り上げや利益を優先するのではなく、お客さまが真に望んでいるものを提供し、その結果として利益がついてくるという考え方です。そのためには社会や人さまのために役立つ行動をしようという強い思いが、まず心になければなりません。そして、お客さまにより良いサービスや商品の提供を通じて、新たな文化の創造や人々のライフスタイルを豊かにすることで、社会の役に立ちたいという純粋で無私の心と、困っている人に喜んでもらえる商品やサービスをお届けしたいという思いやりの心で接することです。

第1回 「お客さまのために」の心が自らの成長・幸せにつながる──「自利利他の精神」

お客さま第一の姿勢を継続的に行なえば、利したことが巡りめぐって自分に還ってくるのです。これを仏教では「自利利他」(じりりた)と呼んでいます。「自利利他」は、また「人さまの役に立つための実践が実は自分自身の心の幸せにもつながっている」という意味もあります。人さまの幸せや社会のために一生懸命働くという行為は自分の心を浄化させ、幸せな清々しい気持ちになり、自分の悩みや苦しみへのとらわれがなくなるのです。

経営とは、自社の限られた経営資源であるヒト、モノ、カネや情報などをフル活用してお客さまのために真に役立ち、社会に必要な存在として貢献していく「自利利他」の実践といえます。

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