目からウロコの仕事力

「お客さまのために」の心が自らの成長・幸せにつながる──「自利利他の精神」

中央学術研究所客員研究員 佐藤武男
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ビジネスとは、人間の素晴らしい営み

また、「自分だけが儲かればいい」ということではなく、お客さまとの「共存共栄」を目指すことや、たとえ法令に違反していなくても道徳や倫理に基づいて経済活動をしていくことは言うまでもありません。

人さまの役に立つ仕事をしたいと思っても、漫然と日々を過ごしているだけでは道は開けません。どのようにしたらお客さまに喜んで頂けるかを真剣に考え、そのために謙虚な姿勢で耳を傾け、分析しアイデアを出し合い、汗を流し、時には寝食を忘れるくらいの情熱で商品開発や提案営業に取り組むという努力を重ねなければ成就できません。自らの強みと弱みを分析し、お客さまの潜在ニーズにヒットする商品やサービスについて抜本的に発想を変え、専門家の知見も総動員して、コストを抑えつつ創意工夫し開発・販売していくことが重要なのです。

もの作りでは、高品質を追い求めるあまり高価格になっては、お客さまに受け入れられず買ってもらえません。停電の多いアジアの新興国では、携帯電話の裏側に太陽光パネルが付いた携帯電話がよく売れたそうです。このように人々のニーズに合った商品開発が求められているのです。

第1回 「お客さまのために」の心が自らの成長・幸せにつながる──「自利利他の精神」

サービス業を例に挙げると「人さまへの思いやりやおもてなしの心」「早くて便利で安心」などが原点です。日本のサービス産業は今、アジアで大いに注目されています。例えば、コンビニエンスストア、宅配便、セキュリティーシステム、学習塾などは、海外でもきめ細かなサービスで高品質であると評判が良く、もっと進出してほしいという声が多く聞かれます。

こうした日本のサービス産業のサービスや品質が海外で大いに評価される主なキーワードは、「利便性、迅速性、確実性、安全性、安心感、良き接客態度(おもてなし)、緻密さ、快適さ、清潔感、美味しさ、環境保護意識(もったいないの心)」です。仕事を進める上でのヒントにしてください。

また、製造業でも日本の技術は注目されています。例えば、環境に優しい省エネ技術、新幹線技術のように安全で快適な高速鉄道システム、ハイブリッド車のような電気自動車、東京スカイツリーのような電波塔技術、海水の淡水化などの水ビジネス、航空機にも使われる軽くて強い炭素繊維素材、PCや携帯電話に不可欠な電子部品など日本には世界に誇れる技術がたくさんあります。すべて努力の結晶です。

ビジネスとは、将来にわたって継続・発展していく人間の素晴らしい営みです。私たち日本人と日本企業は、もっと自信を持って「自利利他」の精神を真に発揮し、困難にチャレンジして次の世代により良いものを引き継いでいきたいものです。

中央学術研究所客員研究員
佐藤武男(さとう たけお)
1954年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、三菱銀行に入行。香港や米国などの海外勤務を経て、三菱東京UFJ銀行外為事務部長を務める。また、貿易電子化諮問委員会の日本代表を6年間務めた。中央学術研究所客員研究員。現在はグローブシップ株式会社常務取締役管理本部長。
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