新【ATARA-SHII】切り出された木の生々しさ

書・文 樂篆家 髙橋 政巳
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〝新〟は、辛+木+斤の組み合わせ。

〝辛〟は、頭の部分に飾りのついた、儀式に用いる大きな針のこと。〝木〟は、位牌を作る木。〝斤〟は、その木を切り出す斤である。

先祖を廟に新しく祀る〝位牌〟を作る際には、立ち並ぶ木々に針(辛)を投げつけ、当たったものを神意によって選ばれた木として、斤で切り出した。

その切り取られた部分の生々しさを〝新〟という。切り出した木で位牌を作るので「あたらしい」「はじめ」の意味となった。

ちなみに、その位牌を見て拝む姿を〝親〟という。

新年を迎えるということは、切れ味鋭い「感覚」という斤で、昨年までの殻を破り、壁を壊し、「あらたな」心に切り替えることなのである。

書・文
樂篆家
髙橋 政巳(たかはし まさみ)
1947年、福島県生まれ。樂篆倶楽部主宰。刻字家。自身を樂篆家と称し、篆書をはじめとする書を通じ、文字のもつ歴史的意味や美しさの伝承に力を注ぐ。毎日展審査会員、NHK文化センター講師、日本刻字協会常任理事および審査員、会津欣刻会会長を務めた。主な著書に『感じの漢字』『感じる漢字』など。2015年没。
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