インタビュー

漁師・NPO法人「森は海の恋人」理事長 畠山重篤 
腐葉土のような人になれ

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腐葉土のような人になれ

――長年、子どもたちを養殖場に招いた環境教育も続けられていますね。

毎年、500人ぐらいの子どもたちが体験学習にやってきます。これまで訪れた子どもたちは1万人を超えました。
私たちが教育にも取り組んだのは、やはり川の流域に住んでいる人びとの心に木を植えることの大切さをわかってほしいと考えたからです。そこをしっかりするためにはやはり環境を大切にする意識を養う教育が必要なのだと思うんです。

腐葉土のように「他者を育てる存在になれ」という言葉は金言だと思います。年齢、性別に関係なく、そのような気持ちで過ごすことで、個人の立場でやるべきことも見えてくるんじゃないでしょうか。他者のために生きるということが、自分自身のよりよい生き方にもつながるんだということを自然を見つめることで気づければと思っています。目の前の川が澄んでいるということは、その流域に住んでいる人びとの心がきれいだということですからね。

――今年、74歳になられますが。

古希を過ぎましたよ(笑)。
14年前に『日本〈汽水〉紀行』という本を書きました。毎月、日本全国の川の河口に立って、そこから何が見えてくるかというエッセイでした。この本で日本エッセイスト・クラブ賞をいただきました。そういう視点でものを見ている人がいなかったということもありましたが、そこから思わぬ読者の反響が広がっていきました。

そこで今度は、世界四大文明の地を流れる大河の河口に立って、そこから何が見えてくるか。世界汽水紀行を著わしたいと思っているんですよ。それをしてからでないと死ねないですね(笑)。

漁師・NPO法人「森は海の恋人」理事長
畠山重篤(はたけやま しげあつ)
1943年、中国・上海市生まれ。京都大学フィールド科学教育研究センター社会連携教授。高校卒業後、気仙沼で家業であるカキの養殖に従事。89年からは漁師による植林活動「森は海の恋人」運動を進めると同時に、養殖場に子どもたちを招いた環境教育にも取り組む。その活動に対する表彰、受賞多数。2012年、国連から森林育成や林業の健全な発展などに貢献した人物に与えられる「フォレストヒーローズ」の初代受賞者の一人に選ばれる。主な著書に『森は海の恋人』『カキじいさんとしげぼう』『鉄で海がよみがえる』『鉄は魔法つかい』『牡蠣とトランク』など。
NPO法人「森は海の恋人」 http://www.mori-umi.org//
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