宗教学者 島田裕巳の“怒りの研究”

あなたが怒ってしまう理由(ワケ)

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「私が怒るのは不条理のせいだ」

私たちは、風評被害や流言飛語のない社会になることを望んではいます。しかし、そのために何か努力をしているわけではありません。そもそも、すべてのことが本当なのかどうかを調べてから、それについて他人に伝えるなどというのは、現実には不可能です。だからこそ、この世の中は不条理なままで、いっこうに怒りを生む根本的な原因が消えてなくならないのです。

ずいぶんと身もふたもない言い方に聞こえるかもしれませんが、それが真実です。世の中は、本質的に不条理なものなのです。

ですから、私たちはそこから出発するしかありません。世の中が不条理なのは、はじめからわかっていることで、それは変わらないのだから、それを前提に行動するしかないのです。こう言うと、「あきらめろ」と言っているのかと思われるかもしれませんが、そうではありません。「世の中は不条理である」という観点は、仏教的な言い方をすれば、「世は無常だ」と言い換えることができます。

ここで重要なのは、「不条理」や「無常」という、普段の生活ではあまり使わない、難しい表現を使って世の中をとらえてみることです。怒りを感じたときは、「私は世の中が不条理だから怒っているのだ」と考えてみてはどうでしょうか。口に出してみるのもいいかもしれません。すると、何かが変わります。怒りがそれまでとは違って感じられてくるはずなのです。

島田裕巳氏
宗教学者
島田裕巳(しまだ ひろみ)
1953年、東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。新宗教、仏教、神道、冠婚葬祭に加え、死との向き合い方、生き方など、宗教学の視点から幅広いテーマで研究・執筆活動を展開する。著書に『葬式は、要らない』『神道はなぜ教えがないのか』『島田裕巳の日本仏教史 裏のウラ』など多数。近著に『日本の新宗教』『人は、老いない』がある。
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