宗教学者 島田裕巳の“怒りの研究”

聖書・古事記から繙く「神の怒り」

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フィレンツェにあるブランカッチ礼拝堂のフレスコ画『楽園追放』。エデンの園を追放されるアダムとエバの姿が描かれている ©Alinari Archives/CORBIS/amanaimages

古の罪と罰…「エデンの園」

激しい怒りといえば、それは何と言っても神の怒りということになってくるのではないでしょうか。『旧約聖書』「創世記」ひもといてみれば、いかに神が激しい怒りを人間に向けてくるのか、その例に事欠きません。

最初はエデンの園での出来事です。神は最初の人類としてアダムという男性を創造し、そのあばら骨を抜き取って女性のエバ(イヴ)を造り出します。エデンの園は楽園で、二人はそこにいる限り、何不自由のない生活を送れるはずでした。ところが、そこに狡猾な蛇が現われて、エバを誘惑します。エデンの園の中央に生えている木の果実だけは食べてはならないと、神から命じられていたにもかかわらず、蛇にそそのかされたエバは、それを食べてしまい、しかもアダムにも手渡してしまいます。それで二人の目は開き、自分たちが裸でいることに恥ずかしさを感じるようになるのです。

その様子を見た神は、二人が自分の命令を破ったことを知ります。神は二人を許さず、エデンの園から追放してしまうのですが、その際に、これからは、お産の苦しみや食べ物を得ることの苦しみから逃れることはできず、最後には死んで土に還らなければならないと宣告します。

そこには、神が怒ったという直接の記述はありません。しかし、せっかく創造した人類を楽園から追い出し、過酷な運命を背負わせたところには、神の激しい怒りが示されていると考えないわけにはいきません。

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