目からウロコの仕事力

無欲と大欲、逆に見えて通ずるもの ―「大欲知足」

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男性が空を見上げている

(画像・AdobeStock)

欲望は悪しきものなのか

「少欲知足」という言葉は、よく知られています。これはぜいたくをせず、過度な欲に溺れず、節制されたかたちでの欲で満足する。つまり「足るを知る」というバランスの取れた心や感謝の心で生きることが大切ということです。

自然界に生きる野生動物は食べ過ぎて苦しむことはないといいます。その点で、「足るを知る欲望」だといえるでしょう。一方、人間は美味しい食べ物だとつい食べ過ぎてしまうように、生き方そのものにも欲に目がくらんで失敗したり、お金に振り回されて悪いことをしたりして、晩節を汚す人が後を絶ちません。こうした「足るを知らない欲望」は、貪欲といえます。

大量消費から生まれる大量廃棄は、地球の有限な資源の観点から決して望ましいものではありません。私たちの周りには多くの欲望―食欲、性欲、物欲、金銭欲、権力欲、出世欲、名誉欲など―で溢れています。その欲望を否定せず、むしろ欲望があるからこそ、冷静にいま起きている出来事に集中し、心を尽くし、節度をもって対処すると、全体が見えてきて執着心がなくなり、心を乱すような欲望が起こらなくなる。それが真の「足るを知る」ことといえます。

2008年、米国の投資銀行リーマン・ブラザーズの倒産はリーマン・ショックと呼ばれ、世界の経済界、金融界を震撼させました。背景には、厳しい競争に勝ち残るためには何をしても許されるという「利益至上主義」が、経営者や社員にありました。倫理・道徳が欠如すると資本主義市場は醜いものになるという欠点をさらす結果となりました。自由に責任と制約があるように、市場はルールと倫理によって支えられているのです。

また、資本主義の基本的なビジネスモデルは、「安いところでモノを作り、高く売る」ことですが、これはいつか限界がきます。なぜなら、いまは中国など海外での生産が盛んですが、中国での人件費が上がってくると、今度はより人件費の安い東南アジアのタイやインドネシアに工場を移転させます。その次にはベトナム、ミャンマーに、さらにバングラデシュ、インドへと工場を移転させていきます。

その地域の経済が富むと人件費が高騰するので、さらに安い賃金で雇える場所へ生産拠点を移転していく。最後にはアフリカに行き着きますが、そこでの人件費が上昇したらもう安く作れる場所はなくなります。欧米型の資本主義手法だけでは限界が近づきつつあるのです。

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