対談

笑う門には福来る!心のエンジンに火を点けるために。落語家・林家たい平×フリーアナウンサー・魚住りえ

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心のエンジンをかけるきっかけ

たい平「ありがとう」って、すごく素敵な言葉なんですよね。これはあるお坊さんが説法で話してくれたんですが、「ありがとう」は「有り難し」とも書くわけで、あり得ないことがいま起こっているという意味でもあるそうなんですね。目の前の出来事や、人との出会いを当たり前のように考えてしまいがちですが、実は奇跡に近いことであって、そのことに対する感謝も込めた「ありがとう」なんです。すると、普段の生活においても使う言葉が大切に思えてきますね。

魚住そうですね。言葉の意味も込めて、しっかり笑顔で発音すると、より相手にも伝わるってことなのでしょうね。私はコンビニで買い物をするときも、店員さんからお釣りやレシートもらえば「ありがとう」と言うようにしています。すると、店員さんも笑顔になってくれるんですよ。

たい平あ、わかりますね。店員さんが、お客さんに、「ありがとうございました」と言うのは当たり前ですけど、お客さんから「ありがとう」という言葉をかけられたら、店員さんも元気になりますよね。〝ぼくのやっている仕事は人のために役立っているんだ〟という報われた気持ちになるでしょうね。

魚住その瞬間だけではあるんですけど、パッとお店の中が、バラ色になるのを感じるんですよ。それは共鳴だと思うんですけど、こちらから笑顔で話しかけることで、みんなが明るくなる。逆にしかめっ面をしていたら、家庭でも職場でも、相手を嫌な気持ちにさせてしまうでしょう。

たい平そうなんでしょうね。私も師匠によく怒られました。居酒屋で、瓶ビールを3本注文したら、「『ビール3本』じゃなくて、『ビール3本、お願いします』だろう。お客だからとか、金を払っているからいいってもんじゃないんだよ。ここで場所を提供していただいて、ビールを飲ましてもらっているんだぞ」って。

魚住仕事だからとか、状況によって立場が上とか下とかではなく、人間として丁寧に接していく心構えが大切ということなんでしょうね。

たい平私は、母校の武蔵野美術大学で講義もさせていただいています。いつも朝早い一時限目の講義なので、なかには元気のない学生さんもいます。そんな彼らには、「朝起きてから教室に来るまでに、自分の心のエンジンをかけて、元気になるきっかけはたくさんあるんだよ」と話します。商店街で掃除をしている人、駅員さん、学校の警備員さんなど、登校途中で出会う人たちとの挨拶が、心のエンジンをかけるきっかけになるんです。見知らぬ人に声を出して挨拶するのは、確かに恥ずかしいと思うかもしれません。しかし、声を出すということが、自分を勇気づけたり、自分の力を奮い立たせたりする第一歩だと思うんです。

魚住笑顔と挨拶が、心のエンジンに火を点けるスイッチなんですね。いいですね。それっていただいていいですか?

たい平どうぞ、どうぞ。

魚住では、「今年は、エンジンをかけるために笑顔で挨拶!」というフレーズを使わせていただきます。

たい平あ、毎回、使用料として500円頂戴します(笑)。日光東照宮には、「見ざる・言わざる・聞かざる」で有名な「三猿」の彫刻がありますが、私の故郷にある秩父神社には、その逆の「よく見て、よく聞いて、よく話す」という「お元気三猿」の彫刻があるんです。今年は、その秩父神社の猿にちなんで、「よく見て・よく聞いて・よく話す」ということを心がけようと思います。

魚住あ、それもいいですね。またいただきます。

たい平ではまた、500円(爆)。本日は、ありがとうございました。

林家 たい平(はやしや たいへい)
落語家
林家 たい平(はやしや たいへい)
1965年、埼玉県生まれ。武蔵野美術大学卒。88年、林家こん平に弟子入り。92年に二ツ目昇進。林家伝統のサービス精神に溢れる芸風を受け継ぎ、「たい平ワールド」と称され高い評価を得て、NHKの新人賞をはじめ若手落語家の各賞を総ナメに。2000年、真打ち昇進。06年、『笑点』大喜利メンバーとなる。独演会を中心に、全国各地の落語会に出演しているほか、ラジオ・テレビ・映画などで幅広く活躍中。近著に『林家たい平 特選まくら集』。
魚住 りえ(うおずみ りえ)
フリーアナウンサー
魚住 りえ(うおずみ りえ)
1972年、大阪府生まれ。高校時代は、放送部に在籍。NHK杯全国高校放送コンテストの朗読部門で全国3位に選ばれる。慶應義塾大学時代は、放送研究会に所属。95年、日本テレビ入社。「所さんの目がテン!」「ジパングあさ6」などを担当。2004年、フリーに転身し、テレビ、ラジオを問わず幅広く活躍中。06年から「魚住式スピーチメソッド」を立ち上げ、話し方を磨くための教室を開講。2015年8月、『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』を上梓。
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