ブックレビュー

【書評】カズオ・イシグロ入門 著:日吉信貴

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信頼できない語り手――英国人作家のカズオ・イシグロ氏の作品の多くは、語り手(主役)の回想で物語が進行するのだが、信頼できないのは、現実から目をそらす主役の言葉が、しばしば読み手を欺くからだ。なぜ、読者を欺くような作品をイシグロ氏は書くのか。

そこには、人が抱える矛盾やずるさ、けなげさが描かれていると日吉さんは捉える。過去を顧みる時、人は真実を直視できない。都合よく記憶を改変し、それを上手に利用して自分自身をも騙す。登場人物に人間が持つ弱さが映し出されている。

イシグロ氏のノーベル賞受賞を予想していた日吉さんが、経歴や過去の発言から作品に込められたメッセージを読み解く。日本が舞台の作品、映画化された作品もある。本書を手にイシグロワールドへ。

〈書籍情報〉
カズオ・イシグロ入門
著者:日吉信貴
出版社:立東舎
定価:本体1300円+税
発行日:2017年12月20日
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