維摩(ゆいま)。在家として日常生活の中で仏道修行に励む、商家の主である。老若男女、誰とでも仲良くでき、悪人とも交わり仏道に招き入れてしまう。よく人に施し、見返りなどは求めない。そんな維摩を畏怖する者たちがいた。お釈迦さまの十大弟子である。
ある日、お釈迦さまは病床に伏した維摩を見舞うよう、弟子たちに命じる。釈尊にも教えにも従順な弟子たちも、この命には尻込みしてしまう。そこには、維摩にやり込められた苦い思い出があったからだ。
すべての人が仏になれると大乗仏教は説く。維摩経では、自分の救われだけを求める十大弟子の偏った見方を、維摩が正していく様子が綴られる。最後に遣わされたのは、智慧の菩薩・文殊――二人の対論に、現代人にも通じる人間の生き方が語られる。