インタビュー

「攻めの養生」で最後まで輝かせる人生 帯津三敬病院名誉院長 帯津良一

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安心を得るには死生観をもつ

○心の養生
誰もが悩みや不安から解放された生活を送りたいと思いがちですが、あまりのびのびし過ぎても好ましくありません。例えば定年を迎えた人が、緊張がほぐれて、のんびり過ごそうと思った矢先、急に病気で倒れる傾向があるのです。

心をしっかり保つためには何が必要なのか。私は死生観に裏打ちされた状態での心の安らかさだと思います。死を正面からしっかり見据え、直視することで、生が輝き始めるのです。

私は医療に携わるなかで、私自身の死をも見据えてきました。そして、死んだら終わりではなく、肉体が滅んだ後は、虚空に還るという、『大きないのちの循環』を感じるようになりました。人は故郷から来て、また故郷に帰るという考え方です。「攻めの養生」を行いながら、いのちのエネルギーを高め、寿命をまっとうしたら虚空に勢いよく還ることが大事と、とらえています。

また、心の養生といっても、無理にポジティブシンキングを心がける必要はありません。以前、私は心療チームを作り、明るく前向きな心を身につけてもらおうと思いました。しかし、それらは人間に必ずしも適したものではないことが、分かりました。人間の心は何か事が起こると、一瞬にして崩れてしまうものなのです。人間の本質は、悲しくて寂しいものだと、とらえてもいいと思います。そこに軸を立て、ささやかながら希望の種を撒(ま)いていくのです。希望から、ときめきを育んでいく、それが一番の心の養生だと、私は思います。

悲しみのあとに希望がわいたり、ときめいたり、また、悲しんだりと、心が循環していくのが、健全な状態なのですね。そして、そうやって人間は成長し、進化していくものだと思います。

ときめきをもつことは重要ですが、何も特別なものでなくてもいいのです。私は居酒屋で旨そうな料理があると、ときめいてきます。また、仕事で頼まれた原稿がのってくると、ワクワクします。

病を克服している人は、こうした小さなときめきを自ら作り出して、いのちのエネルギーを少しずつ高めています。

ちなみに私の活力源は「朝の気功に夜の酒」です。毎朝、気功を行い、夜は夕食でビール一本とウイスキーのダブルロックを二杯だけ飲みます。

「攻めの養生」を通して、いのちのエネルギーを日々、躍動させ、最後まで人生を輝かせていきましょう。

 

帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ りょういち)

1936年、埼玉県生まれ。東京大学医学部卒業。東大付属病院第三外科、都立駒込病院外科医長などを経て、82年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立し、院長となる。医療の東西融合という新機軸をもとにがん患者などの治療にあたっている。日本ホリスティック医学協会会長。日本ホメオパシー医学会理事長。著書に『生死問答—平成の養生訓』(五木寛之共著)『白隠禅師の気功健康法』など多数。
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