ブックレビュー

【書評】心と体をととのえる 呼吸法とマインドフルネス 編:大法輪閣編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

本書の帯には次のようにある。編集者の言葉だろう。「生きるとは『[いき]る』こと。息を見つめると、自分の『心』が見えてくる」。

本書の執筆陣は、総勢26名。インド・ヨーガ、太極拳、日本古武術、仏教各派など、さまざまな思想体系の中に伝えられる「呼吸法」の数々を網羅的に紹介。さらに今注目されている「マインドフルネス」を、仏教の瞑想法と比較しつつ詳細に解説する――そのような壮大な編集意図のもと、仏教書の版元である大法輪閣の歴史的努力が結実した一書だ。

そのマインドフルネスと仏教の瞑想法の違いに関して、興味深い論考がある。藤田一照師(前曹洞宗国際センター長)の「曹洞禅とマインドフルネス」だ。

マインドフルネスと曹洞禅の違いは一体何であろうか。これは、上座仏教のヴィパッサナー瞑想や、米から近年輸入されたマインドフルネス瞑想と坐禅との違いは、という問いにつながり、畢竟、曹洞禅の「只管打坐」とは、という本質に帰着するものだ。

そこで著者は、心理療法の現場やビジネス界の社員研修など、臨床的に応用される、西洋で新しく作り出されたマインドフルネスには「世俗的」という形容を冠するべきであろう、とまず提案する。その理由は、「世俗的」なそれは、実際的目的に資するような効果的なテクニックであり、釈尊から曹洞禅に受け継がれた「仏教的マインドフルネス」と区別されるべきだ、というものである。

しかしその一方で「世俗的マインドフルネス」の有効性は仏教の伝統的権威によって保障される必要はなく、脳科学や認知科学のエビデンスによって裏打ちされればそれで充分であるとして、仏教的ではないという批判は的外れであると著者は言う。

マインドフルネスについて深く学びたい方にお薦めする一冊。

〈書籍情報〉
心と体をととのえる 呼吸法とマインドフルネス
編者:大法輪閣編集部
出版社:大法輪閣
定価:本体1600円+税
発行日:2018年3月10日
発行
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る