原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話

生きるということは他の生命を奪うこと

アルボムッレ・スマナサーラ
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しかし、わたしたちは、他の生命を奪わなければ生きていられません。石や土は食べられません。「殺したくない、殺したくない」と、じーっとしていれば、自分が死んでしまいます。生きるということは、他の生命を奪うことでもあります。これまで生きてきたのは、多くの生命を奪ってきた証なのです。

わたしたちは、大きな自然から、生命という布施をいただいて生きています。だからお返しをしなければならないわけです。
しかし、わたしたちは大きな借りばかりつくっていて、その借りはとても返せそうにありません。

わたしたちが生きているのは、ある意味では、恐ろしいことであり、罪深いことなのです。その実感が生じたとき、心に一つの転換が起こります。そこから、心を浄めていく道が始まるのです。
一人でも多くの人が、そんな生き方に目覚めれば、きっと人間同士が互いの生命を傷つけ合うこともなくなっていくはずです。

画像・AdobeStock

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「ダンマパダ」とは、「真理のことば」という意味です。わたしは「お釈迦さまのことばにいちばん近い経典」と言われるパーリ語の「ダンマパダ」を日本語に直訳し、一人でも多くの人にお釈迦さまの教えを伝えたい、と願っています。
お釈迦さまの教えを「一日一話」というかたちでまとめ、それぞれにわたしの説法を添えました。大切なことは、お釈迦さまの教えを少しずつでも実践することです。そうすれば、人生の悩みや苦しみを乗り越えていくことができるでしょう。

アルボムッレ・スマナサーラ

*アルボムッレ・スマナサーラ長老(**Ven. Alubomulle Sumanasara Thero**)*
テーラワーダ仏教(上座仏教)長老。1945年4月スリランカ生まれ。13歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとる。1980年に国費留学生として来日。駒澤大学大学院博士課程を経て、現在は日本テーラワーダ仏教協会で仏教伝道と瞑想指導に従事する。他にNHK教育テレビ「心の時代」出演、朝日カルチャーセンター講師などを務める。『ブッダの幸福論』『無常の見方』『怒らないこと』(和文)『Freedom from Anger』(英文)など著書多数。
原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話
著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,100円+税 Kindle版(kindle unlimited) 0円
発行日:2003年10月
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