あたらしいわたし 禅100のメッセージ

組織に取りこまれる前?(前回の質問から続く)

広瀬裕子(作家)× 藤田一照(僧侶)
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僧侶の藤田一照さんが、
作家の広瀬裕子さんからの
100の質問に答えます。

――組織に取りこまれる前?(前回の質問から続く)

前回の質問――禅は、そのなかどのように生まれたのですか?
答え――中国で生まれた禅は、国家や組織に取りこまれる前の仏教から生まれました。

画像・AdobeStock

――禅は、宗教改革です

最初から禅宗というものがあったのではなく、
だんだん、そういう呼ばれ方をするようになった人たちがいたんです。
お釈迦さまはあくまでも人間です。人間として生まれ、しあわせに生きたいのに
人は、病気にもなるし、年もとるし、最後には死ななければならない。
そういう人生のジレンマにぶつかった人です。
時間が経つと、そのお釈迦さまの直面したジレンマ、
お釈迦さまが人間だったことを忘れてしまった教えもでてくるわけです。
そんなとき、仏教がお釈迦さまの本来のスタンスからはなれてしまったことを
反省した人たちがいて、
その人たちは、お釈迦さまが「何を言ったか?」よりも
「何をしたんだろう?」という「行」のほうに関心を持ったんですね。
そういう人たちは、国に助けてもらうわけでもなく、
お布施や木の実を食べながら行をしていました。
「釈尊に帰れ」という感じだったんでしょう。
禅は、一種の宗教改革だったと思います。

※釈尊 釈迦牟尼仏の尊称。釈迦族出身の尊者の意。

 

藤田一照

*  *  *
今回、一照さんに100の質問をしました。
坐禅のときに感じていた疑問が「ああ、そういうことか」となったことがいくつかあります。
「あたらしいわたし」というのは、もう一度、生まれ変わる、ということです。
生まれ変わるのは、何度でもできます。
できごと、ものごとの見方を変える、受けとめ方を変える。
それによって、受け応え、表現方法が変化する。自分自身が変化する。
自分が変われば、暮らし方が変わり、暮らしが変われば、自分も、生き方も変わっていきます。
こうしたら、こうなる──。
それは、魔法でもなんでもなく、自然のルール、宇宙のルールだと、一照さんは、言っています。
「真理に目ざめ、生きることで、しあわせになるように」と、お釈迦さまは望まれたそうです。
あたらしいわたしになって、どんなときでも、しあわせであるように。
この本がそのきっかけになれば、うれしく思います。

広瀬裕子
(『あたらしいわたし 禅100のメッセージ』前書きより抜粋)

*広瀬裕子

東京都生まれ。エッセイスト/設計事務所ディレクター/縁側の編集室共宰。「衣食住」を中心に、こころとからだ、日々の時間を大切に思い、表現している。
2017年冬、香川県へ移住。おもな著書に『50歳からはじまるあたらしい暮らし』『整える、こと』(PHP研究所)、『手にするものしないもの 残すもの残さないもの』(オレンジページ)など多数。

広瀬裕子オフィシャルサイト http://hiroseyuko.com
*藤田一照

1954年愛媛県生まれ。曹洞宗僧侶。東京大学大学院教育学研究科教育心理学専攻博士課程を中途退学し、紫竹林安泰寺にて出家得度。1987年よりアメリカのマサチューセッツ州にあるパイオニア・ヴァレー禅堂に住持として渡米。のち、サンフランシスコの曹洞宗国際センター長として日本と海外を往還していた。著書に『現代坐禅講義――只管打坐への道』(佼成出版社)ほか。

オンライン禅コミュニティ「磨塼寺」https://masenji.com/
あたらしいわたし
共著者:藤田一照×広瀬裕子
出版社:佼成出版社
定価:本体1,200円+税
発行日:2012年12月
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