働く者を幸せにする経営

株式会社ラッシュジャパン 「マイノリティが幸せな会社は、マジョリティも幸せ」

監修=前野隆司 取材・文=千羽ひとみ(フリーランスライター)
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2013年の『反同性愛法』がきっかけに

『同性パートナー登録制度』を始めとするラッシュのLGBTやジェンダー施策は、実は2013年に世界中のラッシュが始めた抗議活動がきっかけだった。
「2013年、ロシアで『反同性愛法』が可決されました。これに対して、イギリスのラッシュのスタッフが反対の声を上げたことがきっかけとなって、世界のラッシュ全店を上げてサポートしようと(一部を除く)。そうして始まったものだったのです」

──18歳未満の男女に対し、同性愛の〝助長〟にかかわった場合、罰金を科す──

これを金科玉条にロシアで施行された同法は、拡大解釈や曲解されて同性愛そのものが違法とされたり、無差別に当事者へ暴力が振るわれる事件が続出した。それに対して疑問を感じたラッシュの一スタッフが、みずから声を上げたわけである。

経営者でもなければ役員でもない、言わば〝草の根〟とも言うべき1スタッフから上がった声は、うねりとなって世界中の店舗に波及した。
ラッシュが当時店舗を構えていた世界42か国の825店舗で『反同性愛法』に異議を唱える書類への署名活動が行われ、Twitter上でも同じアクションへの参加を募集した。この活動はこのときだけに止まらず、翌2014年度のバレンタインデーにも、まったく同じ趣旨で同じ試みが実施され、最終的にキャンペーンを実施した国のロシア大使館に署名が提出された。

さらには明けて2016年の6月には、ラッシュからの態度表明として、表面に『GAY IS OK 』とデザインされた限定ソープを販売、その10万個分の収益27・5万ポンド(およそ4950万円)を、LGBT支援団体への寄付する活動が行われている。

キャンペーン限定ソープ『愛する権利』

日本でも抗議の声が上がりはじめた。
2015年、遠いロシアでの問題ではなく、自分たち日本人の問題として考えるべく、日本全国140店舗(当時)で行ったのが、LGBTを始めとする性的マイノリティに配慮した施策をとっている自治体への、エールを込めた賛同者を募る活動である。
PRマネージャーの小山さんが、この取り組みを説明する。

「全国の店舗に賛同ボードを用意して、こうした自治体にもっと頑張って欲しいと思う方、賛同してくれる方にハートマークを書いていただきました。これとオンライン署名サイトの賛同者数、TwitterでハッシュタグをつけてLGBT支援宣言と投稿を呼びかけて拡散してくださった人の数を賛同者の声とさせていただき、集まった1万8000の声を、当時、LGBT支援施策を行っていた7自治体、北海道札幌市、東京都の世田谷区・豊島区・中野区、愛知県名古屋市、大阪府大阪市淀川区、沖縄県那覇市にお届けしたのです」

これがきっかけとなって、社内でも諸制度を見直そうという動きになった。その結果生まれたのが、前述の『同性パートナー登録制度』であり、一切の差別を排したリクルーティングポリシーだったのだ。

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