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「感じる身体・実践する心」Zen2.0レポート(4)

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9月8日と9日の両日、禅とマインドフルネスについての日本初の大規模な国際フォーラム〝Zen2.0〟 第2回が、日本の「禅」発祥の地、鎌倉五山第一の建長寺及び隣接する学校法人鎌倉学園において開催されました。その内容を紹介していきます。

対談する松本紹圭師(中)と荻野淳也氏(右)

「仏教の現代的実践 ポスト宗教 ポスト資本主義」

松本 紹圭:東京神谷町・光明寺僧侶。未来の住職塾塾長。東京大学文学部卒。武蔵野大学客員准教授。

荻野 淳也:一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事。株式会社ライフスタイルプロデュース代表取締役。SEARCH INSIDE YOURSELF(SIY)認定講師。慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科特任教員(非常勤)

*  *  *

コンビニより多い日本のお寺

【松本】
いつも比べられるんですけど、お寺の数が7万でコンビニより多いと言われています。そしてお寺の数はどんどん減っていくだろうと言われている。

お寺は昔は国営だったわけで、明治になって民営化された。その時に妻帯もいいですよってことになった。まずそこで、大きな変化があった。

それまでは国の仕組みの中で、すべての国民は、基本的にどこかのお寺の檀家にならなければならなかった。それを基盤にして、葬式とかお墓とか、死者供養、死者儀礼に関する部分で成り立ってきたわけですね。

それがいよいよ崩壊してきたということで、私はこのこんがらがったお寺の状況をなんとかしたい。お坊さんたちも、自分たちの仕事がなんなのかよくわからない。

はたからみていると、お釈迦様からはじまった仏教なんだから、そこにみんな帰っていけばいいじゃないかと思うんですけど。なかなかそうはいかない。実際にやっていることって、お経を誦んでほとんど先祖供養をしている。

その状況を説明して、「日本のお寺二階建て論」と言っているんです。二階建てとは「ポスト宗教」の話でもあります。

ほとんどの日本のローカルにおいては、お寺のしていることはお葬式とか、法事とかなわけです。だから一階部分は仏教じゃなくて、先祖教なんです。そして、お寺の経済は一階で回っています。

で、その上に、仏教が乗っかっている。私はあえて区別するために「仏道」と呼んでいます。仏になる道。Zen 2.0 的なものも要は二階部分に相当するわけです。

【荻野】
象徴的なのが、2016年のアマゾンがお坊さんを派遣しますってのを始めて、「けしからん」と言われた出来事です。

僕らユーザーからすると別にお葬式というのもお坊さんのサービスの一つだし、派遣してくれて、ありがたいお経を唱えてくれれば、それでオッケーじゃん。そんな人が日本人のほとんどなんじゃないかな。

僕の祖父が無くなったときも、50年間檀家だったお寺の、その住職さんも高齢だったから、足が痛くていけねぇよって断られたんですね。おいおいおい、50年間檀家だったんだぞ(笑)。でもその代わりにきてくれたお坊さんがとっても素晴らしい方だったんですけど。

要は日本仏教でいうと、ビジネスモデルが崩壊しているわけですよね。お坊さんが死について迷っているって。とってもシュールな光景なんじゃないかと思っているんです。

後は、僕たちのやっているマインドフルネスのリーダーシップ講座にも、結構、お坊さんが来ております。悩まれているなと思うわけですね。仏教も資本主義もアップデートしていく時代になっているのかなって思ってます。

【松本】
「宗教」というものをとりまく状況が混乱を極めてますよね。さっきの二階をどうするかっていう話で、べつにお坊さんだけがやらなくていいし、仏教のWisdom(智慧)はお坊さんの持ち物でもないし、お坊さんが、それにすごく通じているかっていうと、そうでもなかったりもする。

もっとインスパイアしてくれる語り方をしてくれるいろんなティーチャーも、いろんな流れの中で出てきている。

いずれにしても、私の言っている「二階」部分はいろんな人がチームで、ある意味、お寺が解放して舞台装置として振る舞えばいいんじゃないか。今回の建長寺さんもそうだと思うんですよね。そういうふうにどんどん開いていったらいいと思います。

【荻野】
一番は、この世の中をどうしたいかという意思だったりとか、ミッションだと思います。世界だとか、地球を平和にしたい。幸せな世の中にしたいと思っている。

GoogleのSearch Inside Yourself(Google本社で研修のために開発されたマインドフルネス実践法)は、ティーチャーの仲間がグローバルにいるわけです。禅も学んでいる人もいる、チベット仏教を学んでいる人もいる。かつビジネスでリーダーシップを発揮している人がいるんですけど。

彼が言うには、「僕にとって仏教は全然宗教じゃないんだよ。Philosophy だったり、Way of Lifeだ」って言うんです。要はライフスタイルだと。

30年40年仏教を学んできた人たちが、シリコンバレーのChief Executive Officer(CEO)のメンター(師匠)になっていたりする。「仏教は宗教をやめようキャンペーン」が、すでに起こっています。

その最たるキーワードが、マインドフルネスやコンパッションやウィズダムになっていると思うんですね。

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