原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話

今なすべきことに意識を向ける

アルボムッレ・スマナサーラ
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いつも「ああ忙しい、ああ忙しい」と嘆いては、追い立てられているように日々を送っている人がいます。ところが、その人の生活をよく観察してみますと、ほんとうに忙しいのではありません。忙しくて時間がないのではなく、雑事に追われて混乱していて、心が落ち着かないだけのことなのです。だから、忙しいと感じてしまうのです。

仕事や家事を「巧みにこなす」ことができれば、「忙しい、忙しい」と焦ることはないでしょう。「巧みな人」は、どんな仕事でも、焦ることなく余裕をもってこなすことができます。では、「巧みな人」になるには、どうしたらよいのでしょうか。お釈迦さまは、「今、行なっていることについて、正しく気づくことだ」と説いています。「正しく気づく」とは、今みずからが行なっていることに、いつも気づいていることです。

たとえば皿を洗うときには、皿を洗うことに気づいている、歩いているときには、歩いていることに気づいている、ダイコンを切るときには、切ることに気づいていることなのです。それができれば、何事につけても、巧みにこなすことができます。

*  *  *

「ダンマパダ」とは、「真理のことば」という意味です。わたしは「お釈迦さまのことばにいちばん近い経典」と言われるパーリ語の「ダンマパダ」を日本語に直訳し、一人でも多くの人にお釈迦さまの教えを伝えたい、と願っています。
お釈迦さまの教えを「一日一話」というかたちでまとめ、それぞれにわたしの説法を添えました。大切なことは、お釈迦さまの教えを少しずつでも実践することです。そうすれば、人生の悩みや苦しみを乗り越えていくことができるでしょう。

アルボムッレ・スマナサーラ

*アルボムッレ・スマナサーラ長老(**Ven. Alubomulle Sumanasara Thero**)*
テーラワーダ仏教(上座仏教)長老。1945年4月スリランカ生まれ。13歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとる。1980年に国費留学生として来日。駒澤大学大学院博士課程を経て、現在は日本テーラワーダ仏教協会で仏教伝道と瞑想指導に従事する。他にNHK教育テレビ「心の時代」出演、朝日カルチャーセンター講師などを務める。『ブッダの幸福論』『無常の見方』『怒らないこと』(和文)『Freedom from Anger』(英文)など著書多数。
原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話
著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版社:佼成出版社
定価:本体1,100円+税 Kindle版(kindle unlimited)
発行日:2003年10月
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