働く者を幸せにする経営

gCストーリー株式会社 「腹を割ってなんでも話せる会社」①

編著=前野隆司 取材・文=千羽ひとみ(フリーランスライター)
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LGBT施策のラッシュジャパン、前科のある人びとを雇用する北洋建設、知的障がい者雇用の先駆者ともいうべき日本理化学工業と、先進的な取り組みを紹介してきた『働くものを幸せにする経営』。

だが世の中は、LGBTでもなければ前科もなく、知的障がいも持たない人が大多数。そうした人びともまた、幸せになって初めて理想の経営が実現できる。今回からは、先進的でありながらも、参考にしやすい要素を持つ企業の取り組みを紹介してみたい。

企業の目的は、関係者全員を幸せにすること

「写真撮るよ~!」と声をかけると、あっという間に人が集まった。とにかく明るいgCストーリー

〝おもしろいこと、しようぜ!〟で始まった企業

2004年、南国シンガポールでの某夜──。
当時33歳だった西坂勇人さんは、これからの方向性を考えあぐねていた。
東京23区ほどの面積しかないこの国に、世界中から膨大なマネーが奔流のように押し寄せている。2000年代初頭のシンガポールは金融工学の発展で、世界中の資本家や経済学者、そしてビジネスパーソンにとってもっとも気になる都市の一つとなっていた。そんな金融資本主義最先端の空気に触れようと、友人等に誘われての旅だった。

シンガポールは街も人も、空前の好景気で沸き立っていた。
マリーナ・ベイには高層ビルが建ち並び、オーチャード・ロードではブランドショップが自慢の商品を並べて客の心を魅了する。富が放つ甘い誘惑は確かに刺激的ではあったが、それがいいとも、ビジネスの目的にしようとも思えない自分がいた。
〝自分は何を目的に働くのか? そして会社とは何なのか?〟
このシンガポールへの旅は、それを探すためのものであった──。

◇    ◇    ◇    ◇    ◇

gCストーリー社長の西坂勇人さん。gCは“growth for Contribution(貢献のための成長)”の略

東京都江東区で、屋外広告のトータルソリューション事業とそのプラットフォーム事業を展開。介護事業やヘルスサポート事業といった分野にも果敢に進出している『gCストーリー株式会社』が標榜する〝関係者全員を幸せにする経営〟の源泉をたどると、代表の西坂さんが社会人となるずっと以前、遠く高校時代にさかのぼる。

西坂さんが語り出す。
「高校生ぐらいのときから僕にはずっと、〝なぜ大学に入るんだろう?〟〝なぜ人は働くんだろう?〟あるいは〝世の中の役に立ち、貢献できる仕事とは?〟と常に考えているようなところがありました。今から思うと33歳ぐらいまではそれをひたすら考えつつ、流されるまま生きていたような気がします」

生きること、働く目的を見いだせないでいた西坂青年は、地元仙台の高校を卒業すると、宮城教育大学に入学する。ここへの進学も教師になりたいという明確な意志を持ってのものではなく、流されるまま、〝気がついたら入ってしまっていた〟といったものであったと言う。

卒業後は教職を選ばす、仙台で友人の父親が経営する屋外広告(看板)用資材を扱う商社に就職した。〝なぜ働くのか?〟を考え続け、答えには手が届かない状況ではあったものの、みずから望んでの就職先であった。

「小さな会社に入りたかったんです。全体の歯車感というか、企業の大きな流れの一部になるという感じが合わなかった。今で言えばベンチャー志向というものだと思いますが、全体を見渡せる会社に入りたかった」(西坂さん)

そう考えて入社したこの会社で、1999年、28歳のときに社内ベンチャーで新事業として、web上にプラットフォーム『看板ナビ』を立ち上げて、全国の看板施工会社を組織化し、自社の看板用資材を販売しようと考えたのだ。

200社を超える加入を集めたが、購入には一向に結びつかなかった。加盟しているのは昔気質の人も多い職人が働く企業。インターネットがようやく実用化し始めたタイミングでもあり、ネット上での資材購入など、まだまだ敷居が高かったのだ。

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