働く者を幸せにする経営

西島株式会社 「〝生涯現役〟で、人と企業を幸せにする経営」②

編著=前野隆司 取材・文=千羽ひとみ(フリーランスライター)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

前回に続き、
愛知県豊橋市の専用工作機メーカー、西島株式会社を紹介する。

この会社には、定年がない。
社員は自分の引き際を自分で決められるのだ。
熟練した技術を持つ人は“宝”――西島豊(にしじま ゆたか)社長の思いを聞いた。

※4ページ目に解説(前野隆司・慶應義塾大学大学院教授)

人と向き合ってこそ、人は動く 人が生きる

西島株式会社社長・西島豊氏

社長は毎朝5時出社が基本

西島の長期雇用とその礎となる適材適所を支えているのが、西島社長が毎朝5時、ときには4時に出社して行っている社員とのコミュニケーションだという。
まずは本社すぐ隣にある寮に行き、寮生たちと朝食を取りつつ声をかける。それを終えると、今度は出社し始めた社員たちに声をかける。
「毎日、社員全員と接触しています。〝おはよう〟という挨拶だけのこともあれば、〝先日の出張、どうだった?〟と客先の様子を聞いたりなど、接触量は日によって異なりますが。だいたい2時間あれば、従業員150人全員と会話できます」(西島社長)

いつでもどこでも気さくに声をかける西島社長

場をあらためての面談となれば、従業員は緊張するし、社長朝礼なら一方的なものとなってしまう。だが、こうしたさりげないコミュニケーションなら、社員の飾らない姿が見えるし、雑談がてら、さまざまな情報を得ることができる。
「〝最近、彼は調子よさそうだな〟とか〝目の色が違ってきたぞ〟等々ですね。
そうした毎日の接触の中で、〝そろそろ彼はこっちに配属する時期だな〟と判断します。
当社は半年に一度、査定がありまして、自己・上司・課長・部長・人事・社長評価の七項目で評価しますけど、私は毎日顔を合わせていますから、部課長よりも見えていると思っています」(西島社長)

こうした社長直々のコミュニケーションが組織の硬直化を防ぎ、晩成型の社員を救い上げることもある。
10年ほど前の、三名で成り立っていた部署でのことであったという。
上司Aが口べたで不器用な社員Bに持っていた不満を、いつもの朝のコミュニケーションで西島社長に吐き出した。
〝あんなヤツ、うちのセクションでは使えない! 異動させてください!〟
事実上、上司からの左遷願いだ。
西島社長が希望どおり異動させたら、後日、上司Aが人員の補充を願い出た。
「私は言いました。〝なぜ!? そんな気はないよ。各セクションにおいては、上司は人を活かして組織運営をするのが仕事。Bを使えきれないのなら、自分に人を使う能力がないということか、二名でも十分やれるってことじゃないの?〟と(笑)
人には、向き不向きというものがあります。
もしその業務が向かなければ、他のセクションでやればいいんです。当社は自社一貫生産で、設計セクションもあれば電気のセクションもある。溶接もあれば塗装、購買もあります。だからその人が生かせる部署はかならずある。こうした柔軟性こそが、〝人を活かす〟ということなんだと思います」(西島社長)

日頃の鬱憤を、思わず吐き出した上司A。
「吐くという字を解体すると、〝口から±(プラスマイナス)〟と書きます。
人は相手のプラス面も口にすれば、マイナス面も口にします。
では、プラス面だけだとどうなるかというと、口と+で〝叶(かなう)〟
マイナス面に目を向けてもいいことは一つもありません。でもプラス面に目を向ければ、前向きでいい状況が叶っていきます」(西島社長)

今、社員Bはそのプラス面が生かせる別セクションでいきいきと能力を発揮している。西島社長の毎朝のコミュニケーションあればこその気づきだった。
150人規模の中小企業は、いや中小企業であればこそ、大企業には真似のできない、〝働くものを幸せにする経営〟ができるのだ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る