日本伝統仏教者のためのマインドフルリトリート

【基調講演1】「プラムヴィレッジにおける戒律、サンガ、 マインドフルネス・トレーニングの関係について」 その1

チャン・ファプ・フイ師
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サンガについて

ブッダが成道された時、悟られた後に最初にされたことは、まずコミュニティーを作るということでした。そしてその集まりにサンガという名前を付けました。サンガというのは、もともとは「四衆ししゅうサンガ」と言いました。男性の出家である比丘、そして女性出家者である比丘尼びくに。それから在家の男性と女性から成ります。

この四つの立場の方が一緒に集まって、「四衆ししゅうサンガ」です。サンガというのは、愛にあふれた、そして、戒律を守って一緒に指導し、実践し、住むといった人たちの集まりです。サンガなしでは、いかにブッダとはいえ、ただ一人では教えを続けて行くことはできませんでした。ですから2,500年以上もの間、ブッダの教えを船のように運んできたのは、サンガなのです。ですから、ブッダとその教えを運んでいるサンガというのは、私たちをしっかり守ってくれ、教えをずっと未来につなげて行くことができる、そういう役割を担っています。

またサンガで一緒にプラクティスをして行くと、実践や指導というのが、非常に深いレベルまで達することが出来ます。サンガでは、多くの助け合いをすることが可能ですから。

ブッダは教えを続けていくために、どうしてもサンガが必要だということが分かっていらっしゃいました。ブッダご自身がサンガを作っていくという能力をお持ちでした。どのようにサンガを作っていったらよいかという技術もご存知でした。

初期の頃、サンガは男性の出家者だけで成り立っていました。最初のお弟子さまは、まだブッダが成道される前に出会った5人の仲間でした。ブッダご自身を含めて、先ほどの5人と足して、6人が最初のサンガの人数でした。

リトリートの会場となった曹洞宗大本山 總持寺 三松閣4階の大講堂

戒の成り立ち

ブッダの教えに基づいて、得度を受けて出家した方は、5年の間に増えてまいりました。そしてとうとう1,250人にまで増えたのです。またそれから後、女性の出家者、比丘尼が集まってまいりまして、その中で修行を続けていました。

そのような時期に「戒」が生まれたのです。最初の5年間、「戒」というものは存在しませんでした。いろいろな年齢の人間やさまざまなこだわりを持った人間が集まってきますので、それによって、大人数で暮らして行くために、何らかのガイドラインが必要だということで「戒」が出来てきたのです。何か問題が起こった時に、ブッダがそこにやって来て、教えを伝えられました。そのような中から「戒」というものが生まれてきました。

ですから、それぞれの「戒」が出来るためには、それが出来る要因がありました。ブッダ在世の頃には、比丘は250の戒を受けました。ということは、そういった「戒」が生まれる250の理由がそこに存在したのです。ただブッダがご自分で作ったということではなくて、そのコミュニティーがそれを必要としたのです。その必要に応じて、それだけの数の「戒」が生まれた訳です。また、その後、女性の出家者、つまり比丘尼が加わってまいりまして、その比丘尼には、348の戒というのが授けられました。

「プラティモクシャ(prātimokṣa)」がサンスクリット語で、「戒」ということです。その「プラティモクシャ」という言葉の原義は「自由に向かって踏み出す」という意味です。ブッダは美しく、そして解放された、本当に自由な生き方をするためには「戒」が必要だとお考えになったのです。それは私たちが考えがちな強制的なルールとは違います。それは私たちが日常の中で解放されて、美しく生きるための、一つの訓練なのです。ですから、「戒」を実際に行う、実践するということは、大いなる自由へ向けて私たちを解放させてくれる道を歩む、ということなのです。

それは私たちが、身体で行う行動、言葉で行うこと()、そして心に思うこと()、この三つの「三業」を行う中で、間違いを起こさないということです。そして「戒」を深く実践するためには必ず、マインドフルネスの実践が不可欠です。マインドフルネスというのは、「今起こっていることに気づける」ということです。

一瞬ごとにマインドフルであれば、私たちは今、身体が何を行っているか、何を話しているか、そしてどんなことを考えているかということに気づきます。「身口意」において、私たちがマインドフルであれば、それら三つを通して、自分がどんなことをやっているのかということに気づきます。ですから、マインドフルネスこそが、「戒」を守るための基盤なのです。またマインドフルネスなしに、「戒」を実践することは出来ないのです。「戒」とマインドフルネスは、一体です。

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