悩み相談

「嫌韓・ヘイトスピーチ・社会的弱者バッシングや極端に政治的な報道に心が乱れます」 答える人:プラユキ・ナラテボー

プラユキ・ナラテボー師
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【編集部注】「仏教的カウンセリング」では当ダーナネット編集部が公募した「悩み相談」に解答をしていただいております。ご相談者の許可のもと編集の上で掲載しています。ご本人の希望で名前は匿名とさせていただきます。
韓国との外交問題、美術館での歴史展示物の賛否、障がい者福祉の補助金の賛否・・・。日本は今、揺れているように感じます。
テレビではあまり議論という形では放送されていませんが、インターネット上では強い言葉が右から左から飛び交っています。
そのようなやり取りを見たり考えたりしていると、心と体がどんよりと重たくなってしまいます。私はSNSで意見をつぶやく事はしないので、ツイッターやネットニュースを見なければ、「見ざる聞かざる言わざる」で何が起こっているのか知ることもなく、心は安寧になるのかもしれません。でも、それも何か違うような気がするのです。
「日本の」などと大きなことを言う前に、まずは自分の心を整えることが大事なのかとは思いますが、未熟な人間が今の「右vs左」のような重たいニュースに向き合う時の心構えをアドバイス頂けると幸いです。
よろしくお願い致します。

質問者:さくら

「どのような心構えを持ったらいいかということ、三つほどご提案したいと思います」by ナラテボー
作画・鈴木勝美(ざぼん)

私もツイッターをやっているのでhttps://twitter.com/phrayuki、ネット上でのその辺りの状況については日頃見聞しております。

昔から比べれば、スポンサーへの配慮などもあってテレビでは放送されなかったような事実を現在はネット情報から知ることができたり、それに対する人々の生の声も聞けるようになったのは、ネット普及のおかげと言えるでしょう。

ところで一方、そうした情報の中には、事実無根の巧妙に設えたデマが混じっていたり、また、ネットで交わされる批判や議論も、ときに相手を罵ったり貶したりの汚い言葉の応酬や、「ヘイトスピーチ」と呼ばれる憎悪を露わにした表現も散見されますね。

そこでまず、私がツイッターに投稿した一文(2019年7月10日投稿)をご紹介したいと思います。

ブッダの示した悪口 / 善口、おさらい。

1. 嘘や根拠のない妄言を語らず、事実を確認して正確に語る
2. 人を罵る貶すなど粗野で汚い言葉を語らず、丁寧で優しい言葉を語る
3. 人の仲を裂くような陰口を語らず、仲直りを促す調和を育む言葉を語る
4. 無駄口を慎み、有意義で相手の心の糧になる言葉を語る

ブッダの「言葉」についての説法をまとめたものです。私としては、ネットや匿名性の高いSNSのメリットや楽しさも認識しています。そこで、ネットにおける言論空間もブッダの教えに基づいた健全な情報やコミュニケーションの場になったらと願い、こうした辻説法ならぬ“辻ッター説法”を日々している次第です。

実はタイでも数年前、「右vs左」の政治的対立からデモ隊同士の衝突が起こりその際、有志の僧侶が双方のデモ隊をまわり、「武器の托鉢」と称して相手を傷つけるような道具を鉢に入れさせ話し合いによる解決を促し、流血の惨事を免れたということがありました。参政権を持たないタイの僧侶は、中立的立場で政治には与しません。正しい情報に基づいて、健全な話し合いが持てるように促す役目を担っているのです。

さて、本題に入りまして、さくらさんのようにネットで情報を得ようとする人が、ネット言論の海で動揺せず、心穏やかに情報活用していくには、どのような心構えを持ったらいいかということ、三つほどご提案したいと思います。

第一に大事な心構えとして、ネットで流されている情報をそのまま鵜呑みにせず、情報ソースを確認したり、捏造された部分がないか確かめたりするなどして悪影響を回避していく、そうした「情報リテラシー」を身につけていくことです。

第二に、ヘイトスピーチや暴言は、そこで語られている内容以上に人の心を動揺させたり、不安にさせたり大きな影響を与えてきます。そうした言葉を目にしてしまった際、私なりに効果があると思う対応法を三つ挙げておきたいと思います。

1. 言葉の「ニュアンス」よりも何を語っているのかという「内容」に焦点を当ててみる。
2. 汚い言葉を丁寧語に翻訳(修正)してみる。
3. 怒りや憎悪を含んだ言葉の奥にある発信者の願いを汲み取ってみる。

以上、いずれも「言葉の暴力性」を弱める効果があります。3については、怒りの奥には必ずその人なりの「こうして欲しい」「こうあって欲しくない」等の願望が込められていますので、表面の荒々しい言葉の奥にある願いを聞き取ってあげる感じですね。

第三に、日頃から気づきの瞑想をして、何事もあるがままに受け止めるトレーニングをしておくこと。正しく瞑想を実践していくと、安定した心の土壌が培われ、懐深くなっていきますので、どんな言葉に遭遇しても心が乱れたりしなくなっていきます。

いかがでしょうか? 上記した三項目を参考にしていただき、さくらさんが心穏やかに、ネット情報との一期一会を楽しく、有意義にご活用いただければと願っております。今回はご質問をどうもありがとうございました。

プラユキ・ナラテボー

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プラユキ・ナラテボー
1962年、埼玉県生まれ。上智大学哲学科卒業。大学在学中よりボランティアやNGO活動に深く関わる。
タイのチュラロンコン大学大学院に留学し、農村開発におけるタイ僧侶の役割を研究。1988年、瞑想指導者として有名なルアンポー・カムキアン師のもとにて出家。以後、自身の修行のかたわら、村人のために物心両面の幸せをめざす開発僧として活動。またブッダの教えをベースにした心理療法的アプローチにも取り組み、医師や看護師、理学療養士など医療従事者のためのリトリート(瞑想合宿)がスカトー寺で定期的に開催されている。
近年は、心や身体に問題を抱えた人や、自己を見つめたいとスカトー寺を訪れる日本人も増え、ブッダの教えをもとにしたサポートを行っている。日本にも毎年招かれ、各地の大学や寺院での講演、ワークショップから、有志による瞑想会まで、盛況のうちに開催されている。

プラユキ・ナラテボー師 よき縁ネット https://blog.goo.ne.jp/yokienn
〈書籍情報〉
「気づきの瞑想」を生きる タイで出家した日本人僧の物語
著者:プラユキ・ナラテボー
出版社:佼成出版社
定価:本体1,800円+税
発行日:2009年8月
〈書籍情報〉
「気づきの瞑想」で得た苦しまない生き方
著者:カンポン・トーンブンヌム
監訳:プラユキ・ナラテボー
出版社:佼成出版社
定価:本体1,400円+税
発行日:2007年11月
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