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2019 テーマ:つながり~「Zen 2.0」クロージングセレモニー

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次に話されたのは、アダプティブ(障がい者)サーフィンの世界大会二連覇を果たした内田一音さんです。江ノ島出身で、自身、先天的に股関節に障がいを持つ内田さんがアメリカ・カリフォルニアで開催されたアダプティブサーフィンの世界大会に出場したのが2017年でした。

世界大会会場の海岸にひかれているブルーマットのおかげで水陸両用の車椅子や普通の車椅子が砂浜まで降りらることを目の当たりにします。「ユニバーサルビーチ(バリアフリービーチ)と呼ばれるブルーマットの引かれているビーチが何百メートルも続く光景に感動しました」と内田さんは語ります。

アメリカの法律では障がい者と健常者は平等であり、お店でも障がい者用のトイレスペースが無いと営業ができないなどさまざまなバリアフリーなサービスが提供されていると知って内田さんは驚きます。内田さんのチームメイトの三人の車椅子の選手は「車椅子から降りて、手で這って砂浜まで降りていくんです。これは私にとってすごく悲しいことでした」と振り返ります。

ユニバーサルビーチ(バリアフリービーチ)を由比ヶ浜から全国へ広げたいと語る内田一音さん(向かって左)

あまりにもショックを受けたのが、海外の選手に「日本は遅れているよね」と言われたことでした。「俺たちサーフィンやりたくて、日本に行きたいんだけどサーフィンをやるポイントがないんだ。日本に行きたくても、サーフィンできないから行かないんだ」。

アジアの中で日本は障がい者のトイレなど施設は整っていると思い、それが自慢で海外に行ったにもかかわらず、「日本は遅れている」と言われたショックを由比ヶ浜の海水浴場を管理する組合長さんにお話しされたそうです。

「だったら、君が世界戦にもう一回行くべきじゃないか。二連覇をすることによって障がい者サーフィンということに興味を持ってもらい、たくさんのメディアに拾ってもらえる。その時に私はユニバーサルビーチをやりたいんだと訴えることがまず、先じゃない」と言われ、再び2018年、世界大会のあるカリフォルニアへ。そして悲願の二連覇を達成し、多くのメディアに取り上げられました。

内田さんの念願がかない、約二十軒の海の家がある由比ヶ浜に900メートルのユニバーサルビーチ(バリアフリービーチ)が出来上がります。2018年、鎌倉では、(水陸両用を含む)車椅子の貸し出しは5台でした。2019年はそれが25台に増えました。水陸両用車椅子を使う方以外にも、「海の家で飲みたいんだ! 海の家で食べたいんだ!」という方がたくさん訪れたそうです。

「私は障がい者のためにと訴え続けたんですけど、ベビーカーの利用者、杖をついている方などがたくさんの人が来てくださいました。この時に私は海の家のアルバイトの若い高校生や大学生くらいの方達が、車椅子が通ると何も言わずに手を差し伸べてくれているのに気づきました。普通に心配りというか、すっと手を差し伸べてくださいました」と感動を述べる内田さん。

二日間にわたる Zen 2.0 に参加された聴衆の方々

「日本は『おもてなし』という言葉があると思うんですけれど、私は『おもてなし』ではなく、『心配り』なのかなって思っています。私も海外に何回か行きますけど、海外の人たちは『おもてなし』ではなく、『心配り』をしてくださるのが楽しいです」。日本は障がい者向けの施設や設備が整っていると内田さん。けれども、海外の方が障がい者として扱われることがなく、普通に健常者と一緒にダンスしたりと楽しませてくれるそうです。

「私の夢はこの『心配り』を日本に持ってきたいということ、まずは由比ヶ浜から活動させていただいたんですけれども、目標は日本全国です」と内田さんは将来の夢を語ります。地域の活性化を目標に「鎌倉資本主義」をルーツとして始まった Zen 2.0。地元にしっかりと定着し始めているように感じます。

クロージングセレモニーは町田宗鳳師の導師のもと方丈にいる参加者全員による「ありがとう禅」の唱和で終了をしました。「ダーナネット」では、昨年に引き続きこのフォーラムを両日にわたり取材しました。その模様を次週より紹介してゆきます。

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